Amblydoras nauticus

 Amblydoras nauticus (Cope, 1874) について。

1. 基本データ

Amblydoras nauticus (Cope, 1874)

 アマゾン川上流域に生息する10cmほどの小型トーキングです。学名はギリシャ語のamblys(鈍い)とdoras(皮膚)に由来します。本種にスポットライトが当たることはなく流通は稀ですが、たまーにアンブリドラスの名で安く売られていたりスコーピオドラス リオマディラの名で高く売られています。分類についてはアンブリドラス属検索をご覧ください。

2. 見分け方

①稜鱗
(上)A. nauticus 、(下)A. monitor 

 わかりやすいのは稜鱗です。本種はトゲトゲがとっ散らかっていますが他種は一列しかありません。と言い切りたいところですが残念ながら他種にもトゲトゲをたくさん持つ個体(変異によるものと思われる)が少数います。ただ、このポイントで十中八九は当たりなので例外アリと考える程度でよろしいと思います。

②頭骨の輪郭
(上)A. nauticus 、(下)A. monitor

 二つ目は頭骨の輪郭です。本種は鋭角はなくギザギザッと収束しますが他種はピンと角張ってシュッと収束します。と言い切りたいところですがこちらも例外アリです。

 他にも顔が丸っぽかったり、何かこうショートな感じだったり、鰭が短いような気がするところなど独特の雰囲気でなんとなく見分けれますが、決定打になるポイントなどが記載される文献は見つけられませんでしたし個人的にもわかりませんでした。

2. ギャラリー

Lサイズ水槽のとき

体色はコロコロ変わります

30キューブに移したとき

白いお腹に白い髭

45cm水槽に落ち着いたとき

砂を敷くほうが楽しい

からだを動かすのが好きなよう

おちょぼ口につき餌の大きさにはご注意を

雌雄差?

3. 飼育について


 特筆すべきことはなく、通常の熱帯魚飼育と変わりません。水槽に隠れ家を入れ、砂を敷くと落ち着きます。隠れ家はピッタリ合うサイズのものを、砂は潜りやすいよう粒の細かく丸いものを選びます。他のトーキングと比べるとよく泳ぐ方だと思います。丈夫なので基本通り水温25℃水質中性で問題なく飼育できていますが、丈夫さに甘えることなく丁寧な飼育を心がけましょう。

Platydoras armatulus

 Platydoras armatulus についてまとめました。一般に流通するホワイトライントーキングキャットフィッシュ、略してホワイトラインです。

1. 基本データ

Platydoras armatulus (Valenciennes,1840)

 オリノコ川下流域、アマゾン、パラグアイ-パラナ盆地に分布するドラスで、15cmほどまで成長します。ワイルド個体だけでなくCB個体も流通します。特に3cmほどの赤ちゃんホワイトラインは目に何匹入れても痛くないほど可愛らしいです。成長するとだんだんと格好良くなります。ホント素晴らしいナマズ。学名のPlatyは「平らな」、doras は「皮膚」を意味します。目にする頻度が多く知名度も高い割に、未だ同属多種との違いが写真付きでバシッと書かれた図鑑や記事がありません。ミステリアスな一面もあるわけです。
 私は初めて目にしたドラスも初めて飼育したドラスも本種なので特別な思い入れがあります。(おそらく)調子や気分に合わせて体色や顔色がコロコロ変わるので見ていてとても愛着が湧きます。向こうからしてみればコッチミンナ!でしょうけどね…

2. 写真いろいろ

 撮り溜めている本種の写真を貼っておきます。過去写真を漁るうちにドラスの飼育歴は短いもののいろいろな思い出があるなぁとしみじみしておりました。

飼いたてホヤホヤのとき。私もドラス飼育者に成り立てホヤホヤ。2020.2.19

あどけない顔をしています。2020.2.23

Blue-eye catfish の英名もあります。2020.10.24

ブラックウォーター時代。2020.12.28

百均で買ったクリップ型のマクロレンズを携帯に付けて遊んでいた頃。2021.1.6

またクリアウォーターに戻してますね。可愛らしいお気に入りの写真です。2021.4.22

本当にカッケー。2021.5.14

ドラスは「背中で語る」ですな。上見で楽しむのもアリよりのアリです。2022.1.30

ひとつ前の写真から縦横比が変わったのはコンデジを使い始めたためです。まだまだあどけない顔つき…?2022.3.15

3. 飼育について

もはや隠れもしない45cm水槽のガキ大将

 本種を飼育するには最低でも60cmレギュラー水槽を用意しましょう。個人的に以前は45cm水槽で飼育していましたが無理を感じたので現在は60cm水槽で飼育しています。
 45 cm水槽で飼育していたときは他のドラスを蹴散らし餌を食い、タンクメイトは痩せ型になっているのに対して本種だけはブクブクに太っているというなかなかの状況でした。我が家の個体はワイルド個体かCB個体かわかりませんが、当時は警戒心が薄くまさにホワイトライン天下だったため、底モノとの混泳は困難を極めました。餌取り問題だけでなく、そもそも遊泳スペースが小さく感じたのも45cm水槽脱却のきっかけです。ただホワイトラインに関してはお腹が出るだけで体が曲がったり顔や背中にまで脂肪が付いたりはなかったので助かりました。

お腹が出すぎドラス

 60cm水槽に引っ越してからというもの、急におとなしくなり、警戒心バリ高でシェルターに引きこもってしまいました。初めは60cm水槽に1匹の単独飼育でしたがあまりの引きこもり具合にこれはイケると思い、南米のナマズやカラシンも入れて熱帯魚の混泳を楽しんでいました。さらに知り合いがスパイニーイールやチェリーバルブなどもぶっ込み多国籍水槽と成り果てた今でもホワイトライントーキングはおとなしいままです。おかげで痩せて理想的な格好良い体型になりました。

新しい水槽でやつれるドラス

 警戒心が薄くなったときの話を出しましたがさすがにシェルターは必須と考えます。日中、姿を見せてくれるときも確かにありはしましたがやはりドラス、基本はシェルターの中です。あるとき水槽からシェルターを取り出し、代わりに流木だけを置いてみましたが、ホワイトラインが木の下に潜り込みタンクメイトが隅でドン引きしてしまうカオス環境となったため、1日も待たずシェルターを戻した記憶があります。

これはこれで野性味溢れる…?

 何はともあれひたすら丈夫で飼いやすい魚です。大型魚水槽のお掃除用サブで飼われていたりしますが主役を張れる見応えバッチリの魚です。アクアリウム初心者も玄人も是非飼育してみてね!

ホワイトライントーキング検索

 ホワイトライントーキング(Platydoras属)の魚類検索を作りました!私が実際に飼育したことがあるのはP. armaturus だけなので感覚的なアレは乏しい内容かも。




Platydoras birindellii 

アルマータストーキングなどの名前で流通します。明るい茶色の体色に加え黄土色の大きな稜鱗が連なるなど特徴の多い個性的な種です。よくシングー川の瀬で泳いでいるとのことなので飼育の際には大型の水槽にディフューザーを付けて岩組みなんかカッケーなと思います。また、 Centrochir crocodili(Humboldt, 1821)の姉妹種のようです。聞き馴染みはありませんが変で良いドラスなので是非調べてみてください。

Platydoras costatus 

ビッグスケールドラスなどの名前で流通する黒い系プラティドラスです。熱帯魚店の入荷情報を見ていると黒い系プラティドラスには、ビックスケールドラス、ニュービックスケールドラス、プラティドラスsp. の3タイプがいるなぁと感じますが、どのタイプが本種にあたるのか、そもそもそれらの間に種レベルの差はあるのか全くわかりません。私調べでは普通のホワイトライントーキングの稜鱗は27枚前後なのに対して、黒い系プラティドラスは30枚になるという違いが見られます。昔の書籍では本種の学名がホワイトライントーキングキャットに宛てられていますが間違いです。

Platydoras hancockii 

ハンコッキーというとハンコッキートーキング(アンブリドラス属)を思い浮かべる人が多いでしょうし、昔の書籍でもアンブリドラスの学名はAmblydoras hancockii と紹介されています。しかし、正しいハンコッキートーキングの学名はA. monitor です。また、hancockii の種小名をもつドラスは本種のみです。真のハンコッキートーキング(P. hancockii)の流通は少なく、どこからこの名前が出てきたのか…不思議に思います。  

Platydoras armatulus

流通するホワイトライントーキングキャットのほぼ全ては本種です。スポッテッドトーキングキャットと並んで小型ドラス入門種と紹介されますが、小型種と考えていてはあっという間に水槽が小さくなります。

Platydoras brachylecis

正直よくわからない種なので言うことがありません。


Reference 

Leandro M. Sousa, Mateus S. Chaves, Alberto Akama, Jansen Zuanon and Mark Henry Sabai. Platydoras  birindellii, new species of striped raphael catfish(Siluriformes: Doradidae)from the Xingu Basin, Brazil. Proceedings of the Academy of Natural Sciences of Philadelphia. 2017. 166(1):1-13



Nivaldo M. Piorski, Julio C. Garavello, Mariangeles Aree H. and Mark H. Sabaj Pérez. Platydoras brachylecis, a new species of thorny catfish (Siluriformes: Doradidae) from northeastern Brazil. Neotropical Ichthyology. 2008. 6(3). 481-494

アガミクシス属検索

 アガミクシス属について個人的見解をまとめました。といっても2種だけです。





Agamyxis pectinifrons 

スポッテッドトーキングキャットです。主にペルーやブラジルからの個体が流通します。

Agamyxis albomaculatus

A. pectinifrons とは浮き袋の形が違うらしいようです。オリノコ川に生息しているとのことなのでコロンビアからの個体は本種かも?ですが、詳しいことはホントわかりません。とりあえずコロンビア産の個体を本種として紹介しています(リンク)。

Agamyxis pectinifrons

 Agamyxis pectinifrons (Cope, 1870) について。いわゆるスポッテッドトーキングキャットです。

1. 基本データ

Agamyxis pectinifrons (Cope, 1870)

 スポッテッドトーキングキャットの名で流通します。ペルー、ボリビア、エクアドル、ブラジルのアマゾン川流域に分布する10cmほどの小型ドラスです。飼育されている個体で20cmほどのを見せていただいたことがありますが、アレはドラスというか…王蟲とかいうまた別のバケモンです。コロンビア、ベネズエラのオリノコ川流域には同属の Agamyxis albomaculatus (Peters, 1877) が分布しており、コロンビア便の流通個体が本種に当てはまるのかと思います。なにやら浮きぶくろの形で見分けることができるようですが… 残念ながら外見上の違いは把握できていません。
 Agamyxis の語源はギリシャ語のagan(多い)とmyxa(粘液)からです。もちろんナマズの仲間なのでヌルヌルはしますが名前になるほどではない気がします。
 写真の個体は尾柄部の模様が白く乱れていますが、これはCB個体に見られる特徴のようです。

2. 写真いろいろ

 反射していたり指が入っていたり…あまり良い写真は撮れていませんがモデルがかわいいのでご覧下さいませ。

ザ・CB 個体の風貌

カッチョいい背中

もっちり腹側

3. 飼育について

 私はCB個体のみ飼育歴があり、ワイルド個体は触ったこともないので悪しからず。


 底砂に潜るといった行動は見せず、木の裏やシェルターの中に隠れたがります。ずんぐりむっくりな体型ですから当たり前といえば当たり前かもしれませんね。


 また、シェルターに隠れているときに引っ張り出そうとすると胸鰭をロックして立てこもります。水換えや水槽の引っ越しの際では意外と厄介になるので注意が必要です。
 CB個体の特徴なだけかもしれませんが、餌はドラスの中でもよく食べる方でかなり太りやすいと思います。まだ人前に出てきますが所詮ドラス、引きこもりなので飼育者がキッチリ確認&管理しましょう。

4. アカンソドラスとの見分け方

 スポッテッドトーキングキャットはポピュラーでドラスの入門種的存在となっていますが、その一方で “スポッテッドかアカンソか問題” でナマズファンを翻弄しています。
 例えば一部のスポッテッドトーキングキャットは「ヨシドラス」「サンダーアカンソドラス」などの名前で高額で販売されています。ヨシドラスやサンダーアカンソドラスは一応アカンソドラスの仲間とされているので名前と中身が違うじゃないか!という問題です。ただ、もちろんその名通りのホンモノが売られている場合もあります。加えて、間違ったインボイスネームのつけられたスポッテッドトーキングでも珍産地だったり特徴的な見た目だったりするので買って損することはまずありません。ご安心を。
 なら区別する必要がないと言われればそれまでですが、飼育者たるもの好きなコが気になるのは当たり前。てな訳で比べてみましょう。上がスポッテッドトーキングキャット、下がアカンソドラスです。
 

一目瞭然なのは尾鰭の形です。上は三角形に対して下は丸型になっているのがわかります。ここを見れば確実に区別できます。他にも目の大きさ、頭部の模様や各ヒレの形や骨などに違いはあるので慣れれば雰囲気で見分けられるようになります。


アナドラス属検索

 アナドラス属について個人的見解をまとめました! 駆け足で作りました…



 まあ形にはしましたが… 論文など参考元がなかなか見つからなかったので内容には不安があります。下に細々と書きましたがふわふわとした内容になっています。

[Anadoras grypus]

 グリプスが最も耳にするアナドラスだと思います。ポスターに書いてはいませんが、シャープな体型をしていて、黒斑模様が白で縁取られている個体が多いような気がしなくもない…です。

[Anadoras weddellii]

 ウェッデリー も耳覚えがある方が多くいらっしゃるでしょう。現状、寸詰まり体型をしていて全体的に淡い色の個体がウェッデリーではないかと思っています。
 そのためイラストでは特徴的な淡い色にしましたが、グリプスに似た白黒カラーの個体もいます。ただ黒斑模様に白縁取りがないのが違いになっているような…?

[Anadoras insculptus]

情報不足により言うことなし!

[Anadoras regani]

こちらもまた情報不足により言うことなっしんぐ。


こんな具合で浅くしか調べられていませんがこれからの研究や書籍に期待しましょう。

Reference 

Steven Grant (2021): Banjos, Dorads and Woodcats − Aspredinidae, Doradidae and Auchenipteridae Catfishes. ATS-Aquashop.de. 299p.

Dignall, J.G. (2022, 20th June). PlanetCatfish.com, The aquarium catfish website.

アンブリドラス属検索アップデート(2)

  以前の投稿のアンブリドラス属検索をアップデートしました。


 イラストでは鼻の位置を見直したり、レイアウトをいじったり… 細々と変えてます。


(タップすると高画質の画像を読み込めます)

今回からラベルをアップデートに変更しました。

アンブリドラス属検索アップデート(1)

  以前の投稿のアンブリドラス属検索をアップデートしました。

 それでは最新ポスターです。(バージョンをつけるとカッコいいと思ってやってます。数え方が間違っていればカッコ悪いので教えてくださいね。)


(タップすると高画質の画像を読み込めます)


【変更点】
①アンブリドラス ノーティカスをカラーチェンジしました。以前のような灰色になるのはなるのですが茶色が普通カラーっぽい…?

グレーな気分なんでしょうか。。。元気出してね。

ブラックウォーター気味ではありますが体色は茶色だとわかると思います。ただ底砂を見る限り茶色補正の影響は少なそうですね。

②全くわからないという意味も込めてNo imagineとちょけたのですが、ツッコまれたのでおとなしくNo imageにしときます。

③アンブリドラス ボリバレンシスとゴンザレスのシルエットに塗り残しがあったため塗りつぶしました。

【追加変更点】5/11
①英語版ポスターにおいて学名のフォントを一部変更しました。

②またもやシルエットの塗り潰しが足りなかったので塗りきりました。


日本語の方はver. 1.1.1、英語の方はver. 1.1.2が最新版です。

アンブリドラス属検索

  アンブリドラス属について個人的見解をまとめました!
 あやこや言う前にとりあえず。いくらかの変更点がありましたのでコチラから先にご覧下さい。

タップすると高画質で見ることができます
とどのつまりこのポスターが今回の肝です。でも続きも読んでちょんまげー。図にまとめるところでかなり手短な説明になったためこれから詳しく話していきます。ソースは逐一書きますが下にもズラッと載せておきます。

A poster in English is also included at the end.
(最後の方に英語版のポスターも掲載しておきます。)

 では左ページから…


 まずMerodoras nheco ということで参考元はココ*1 です。新種メロドラス報告論文なので信用できると思います。興味を持った、そんなあなたには私が以前作ったメロドラスの記事をオススメいたします。
 海外ではAmblydoras nhecoと紹介されているサイトや書籍が多く見受けられます。またアンブリドラス属に分類されているどころかンヘコの記載がない論文もあることから知名度は低そうです。論文が出ているので新属、新種として認められているはずなのですが…
 日本でもメロドラスの名前でアンブリドラスが売られていたりするので今回ポスターに掲載しておきました。それはそうとメロドラスの名前で売られるアンブリドラスも珍しい見た目をしているのでお買得だと思いますよ。

 次にA. nauticus ですが参考元は洋書*2 です。トゲトゲしてたらA. nauticus だというニュアンスで書いてありました。実際のところはわかりませんがそれを信じるしかないようです。読み方はノーティカスとしましたが私調べです。響きが良いですね… 我はノーティカ・セブン〜♪ 
 洋書についてですが、マイナーなドラスにしては色々と書かれていて良いと思いました。ポスターには関係ありませんが同シリーズのピメロディアの本*3 も買ってみました。写真がとても良かったのですが残念ながら現在では売り切れになっています。文章についてはほぼ読めていないので評価できません…

 そしてA. affinis です。アフィニスの名は見覚えがある方もいらっしゃるでしょうが実はここからだいぶ怪しくなります。枝分かれ条件①グアポレ川、ブランコ川、エセキボ川はココ*4 が参考元になります。ココだけでなく他文献、他サイトにも同じようなことが書かれていました。
 ただグアポレ川とエセキボ川は地理的に違いすぎますよね… 


 ワタクシお手製の地図をご覧くださいませ。エセキボ川の先っちょからグアポレ川の分岐点、すなわち2河川の最短直線距離が約1620kmです (私調べ) 。例えば札幌市〜鹿児島市が直線距離で1590kmとなります。頭の中で30km足しておいてくださいね。ま、距離もですが川自体も異なりますので研究の余地アリだと思います。
 枝分かれ条件②目がデカい ③背ビレ長い には根拠がありません。え?
 入荷されるアンブリドラスを見ていると個人的にコレっぽいのとソレっぽいので2つパターンがあるなぁと思っていまして… 前記の洋書においてアフィニスの写真がコレっぽい個体だったのでその特徴を条件として書いてみました。なので補助的な条件として、②③にはあまり頼らない方がいいかも。

 ではでは右ページへ。


 A. monitor ですがこれがまたフワフワしていて困ります。おそらくモニターが私の思うコレっぽいアフィニスに対し、ソレっぽいアンブリドラスです。枝分かれ条件①はアフィニスと同じところが参考元です。(ココ*4) もう外見での見分け方なんて無くなりました。産地で見分けようにも「アマゾン川上流域」でございます。決して適当に作った訳ではなく、現状どう詳しく調べてもそれまでとしか言えません。

 A. bolivarensis A. gonzalezi ですがとうとうイラストも消え、枝分かれ条件はもちろん産地で、その産地も被っていてと、来るところまで来ましたね。アフィニス、モニター同様ココ*4 が参考元です。ボリバレンシスはベネズエラ、オリノコ川流域… ゴンザレスはオリノコ川流域、カシキアレ運河…


 お手製地図、再び登場。カシキアレ運河またの名をカシキアレ川ですがオリノコ川とネグロ川を繋ぐ河川のようです。短く見えますが全長326km (Wikipedia*5 より) あります。およそ東京〜琵琶湖が直線距離でそのくらいです。
 ネグロ川に繋がっているということでアンブリドラス “カイクビ” のインボイスで入荷されたドラスがゴンザレスだったのかもしれないですね。
 ボリバレンシスの方は触れません (捻り出す話題も見つけられませんでした)。

 まとめますがこのポスターでアンブリドラスは網羅できていると思います。イラストは形、色ともにその種の中央値っぽい個体になるよう作りました。ただし形についてはドラスそれぞれで、この個体とこの個体は同種なハズだけど違うなあと思うケースもあります。色についてもドラスの状態次第で変わります。イラストはあくまで中央値ですので気を取られすぎないよう。もう1つ、残念ながら未記載種の場合、このポスターではどうにもなりません。雰囲気がなんか違うなと思うのであれば他属であることを疑う、もしくはAmblydoras sp. にしておいてください。なんとなく目星がつくのであればAmblydoras cf. 〇〇〇 にしてもよいかもしれません。

 以上です。…ここで熱帯魚に詳しい人は
「あれあれ、ハンコッキートーキングとか言うのに。 A. hancockii 出てこなかったな。」
と思うかもしれません。それもそのはずペットショップや書籍ではアンブリドラスのことをハンコッキートーキングキャットの名前で紹介する場合が多々あります。ですが私が考えるに

アンブリドラス ハンコッキーは間違いだ!

そうです。私も今回この投稿をするために調べ始めた付け焼き刃ではありません。日頃から暇さえあればドラスを調べている訳ですし。
 根拠として第一に論文でA. hancockii の名を見たことがありません。第二に複数の海外サイトにおいても、洋書においてもA. hancockii という種は掲載されていません。
 ではよく入荷されるハンコッキートーキングは何者なのでしょうか。

ハンコッキートーキングのイメージ
 写真はよくいるタイプのアンブリドラスです。この個体は産地不明なのですがよく安価でハンコッキートーキングとして売られるのはペルー産が多い傾向です。では早速アンブリドラス属検索を使ってハンコッキートーキングの同定をしましょう!
 えーと(画像とポスターを見比べながら)、まずトゲトゲは尾っぽまで繋がっていてお肌スベスベですので稜鱗は完全でくっきり一列ですね。そいでペルーにグアポレ川、ブランコ川、エセキボ川は流れいていませんし、このドラスは目がデカいわけでも背ビレが長いわけでもない普通の感じですよと。


 Aに進みまして、ペルーにはアマゾン川の支流が流れています。それもかなり上流域ですね。ですから…


 アンブリドラス モニターにたどり着くわけであります。即ちこのことから導き出される結論は

ハンコッキートーキングキャットではなくモニタートーキングキャットだ!

ということ。ハンコッキートーキングキャットは流通名であり学名とは関係ないのでそのままでいいのですがわかりやすく言うとモニタートーキングキャットになるということです。しかし学名になると話は変わります。流通量が多く、よく書籍などで掲載されるアンブリドラスの名はA. hancockii というのは間違いでA. monitor なのです。私は以前からちょくちょくアンブリドラス ハンコッキーはいないと言っているのですがこのようなストーリーが中身にあったのです。ではA. hancockii は全くの虚であるかといいますとそうではなく、現状Platydoras hancockii のシノニムとして扱われているようです。ちなみにプラティドラス属にはホワイトライントーキングキャットなどが分類されています。私が1番伝えたいことはこれでした。
 これらは個人的な見解です。もちろんアンブリドラスのことをA. hancockii という方々を批判するわけではないですし、古くから呼ばれてきたハンコッキートーキングの名からA. hancockii は正しい学名のように思えます。しかし何が信用に値する情報のか、調べればすぐにわかると思います。
 …とは言いつつ間違えであればごめんにょっぴー。それこそAmblydoras cf. monitor とでもしましょうか。ビビりですから保険をかけておきました。
 ただA. monitor の中でも頭の形や模様、雰囲気などにおいて様々な差異を感じますので完璧なアンブリドラス属検索ポスターにはまだまだ程遠いと感じます。この差異はA. monitor に限らず多くのアンブリドラスで言えることです。現段階では解明しきれているとは言えませんが研究者さんには頭が上がりませんね。

 今後、研究の発展や、新たな論文が閲覧可能になることで私の作ったポスターが物足りなくなるかもしれません。その場合は適宜手直しして更新しますので
ホーム画面左上サイドバー > ラベル >魚類検索
から最新の投稿をチェックしてみてくださいね。


A poster written in English are also available.
(英語版のポスターも掲載しておきます。)



Reference

(参考元の参考がソースになっている場合もあるかもしれませんがそこまで追えませんでした…orz)

*1 
論文 : HORÁCIO HIGUCHI, JOSÉ L. O. BIRINDELLF, LEANDRO M. SOUSA & HERALDO A. BRITSKF (2007): Merodoras nheco, new genus and species from Rio Paraguay basin, Brazil (Siluriformes, Doradidae), and nomination of the new subfamily Astrodoradidae.

リンク先 : Research Gate (2007):  (PDF) Merodoras Nheco, New Genus And Species From Rio Paraguay Basin, Brazil (Siluriformes, Doradidae), And Nomination Of The New Subfamily Astrodoradidae. (https://www.researchgate.net/publication/255603246_Merodoras_Nheco_New_Genus_And_Species_From_Rio_Paraguay_Basin_Brazil_Siluriformes_Doradidae_And_Nomination_Of_The_New_Subfamily_Astrodoradinae). accessed 6 April 2022.

*2
本 : Steven Grant (2021): Banjos, Dorads and Woodcats − Aspredinidae, Doradidae and Auchenipteridae Catfishes. ATS-Aquashop.de. 299p.

リンク先 : ATS-Aquaop.de (2020): Banjos, Dorads and Woodcats − Aspredinidae, Doradidae and Auchenipteridae Catfishes. (https://www.ats-aquashop.de/en/products/books/banjos-dorads-and-woodcats-aspredinidae-doradidae-and-auchenipteridae-catfishes/). accessed 6 April 2022.

*3 話に出したので書いておきます。
本 : Steven Grant (2021): Pims − Pimelodidae, Heptapteridae and Pseudopimelodidae Catfishes. ATS-Aquashop.de. 219p.

リンク先 : ATS-Aquaop.de (2020): Pims − Pimelodidae, Heptapteridae and Pseudopimelodidae Catfishes. (https://www.ats-aquashop.de/en/products/books/pims-pimelodidae-heptapteridae-and-pseudopimelodidae-catfishes/). accessed 6 April 2022.

*4
論文 : CARL J. FERRARIS, JR. (2007): Checklist of catfishes, recent and fossil (Osteichthyes: Siluriformes),
and catalogue of siluriform primary types

リンク先 : Magnolia Press (2007): Zootaxa, Checklist of catfishes, recent and fossil - Magnolia Press. (https://www.mapress.com/zootaxa/2007f/zt01418p300.pdf). accessed 6 April 2022

*5
リンク先 : カシキアレ川  (April 6, 2022 23:00 UTC) In Wikipedia: The Free Encyclopedia. Retrieved from https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B7%E3%82%AD%E3%82%A2%E3%83%AC%E5%B7%9D