キボシドットカイザードラス(Wertheimeria maculata)を紹介します。仰々しい名前ですよね。ちなみに、お隣の中国では“繁星鐵甲武士(星まみれのドラス)”と呼ばれているようで、なんとなく“美しい魚”という感性は共通しているようです。
一方、ブラジルでは“Roncador(いびき魚)”、アメリカでは“The Snoring catfish(いびきナマズ)”と呼ばれているようで少し気の毒に思います。
W. maculataの生体個体。
1. 概説
学名:Wertheimeria maculata Steindachner, 1877
ヴェルトハイメリア マクラタ
Wertheimer(ドイツ人名)+macula(斑点-ラテン語)
分布:ブラジル南東部(ジェキチニョーニャ川・パルド川)
IUCNレッドリスト(2018年):Least Concern(低危険種)
<形態>
図1. Steindachner(1877)によるW. maculataの図版(Tafel X)。
かなり数えづらかったので、計測ミスがあるかもしれませんが我が家の個体はD. Ⅱ/6. P. Ⅰ/9. V. ⅰ/5. A. ⅳ/11でした。
図2. W. maculata の体側。触ってみても突起物は特に認められなかった。
稜鱗(midlateral scutes)をもつが、他のドラス類と比較すると顕著ではない。厚い皮膚に覆われており、皮膚表面はなめらかである。ただし、標準体長75 mm以下の個体では尾柄部にのみ棘が見られる(Birindelli, 2014)。
<生息地>
河川の本流および大きな支流で、流れのある場所やわんどに生息する。食性は多様であり、主に水際に生育する植物の果実や陸生昆虫を餌とする(Vono & Birindelli, 2007)。
<遺伝子>
核型は 2n = 58 で、24本の中部動原体染色体(metacentric chromosome)、12本の次中部動原体染色体(submetacentric chromosome)、8本の次端部動原体染色体(subtelocentric chromosome)、14本の端部動原体染色体(acrocentric chromosome) から構成される。核型 : 24m + 12sm + 8st + 14a(Takagui et al., 2019)。NOR(核小体形成領域)はテロメア部に位置し、1対の相同染色体にのみ存在した(Eler et al,. 2006)。
2. 魅力
なんというか、顔だけ見ると、
ハンカチ持ってなさそう。
リュックの底に小銭が溜まってそう。
「レシートいりません。あ、やっぱください。」って言いそう。
つまるところ、
コイツはどんくさい顔してる
って思う。
スポットは茶色く地味だし、
ドラス特有のゴツゴツ感が全くないし。
まあ背鰭の模様は綺麗やけど。
お前、、、
かっこよくないで。。。
飼う前はそう思ってた。
飼ってから、コイツの“夜の顔”を知った。
深夜3時。
もちろん水槽の明かりは消えていて、真っ暗。
夜行性のナマズたちがクルクルと泳ぐ。
窓から外灯の明かりが微かに差し込んで、
クルクルと影を作る。
そんなステージで、
奴は主役で、誰よりもヒーロー
体中の白色のスポットから光が漏れ出し、
発光体ともいうべきその身体は
妖しく輝いて影を残さない。
ドラスらしからぬツルンとしたボディ。
官能的な体をくねらせて泳ぐその姿に
機能美と形式美は共存しうる、と教えられる。
深夜のオンステージは写真には収まらない。
真っ暗の闇の中で、ぼおっと光って見えるスポット模様は
まさに星。
見るもの視線を搔っ攫う、
圧倒的なスター性と存在感。
存在感。。。スター性。。。星。。。
簡単に言い表すのであれば
「キボシドットカイザードラス」
なんでしょうな。(タイトル回収)(ドヤ顔)
3. 購入と飼育
私はアクアショップKGで購入しました。
2024年9月上旬に入荷したブリード個体とのことでしたが、
特にブリード感を感じることなく飼っています。
商業的なブリードは
2019年にH&K社とTanganyka fish farmが協同で成功したようです。
(Facebookで確認できます。)
ただ、F1個体までしか成功していないようので
この個体もきっとそのF1なのでしょう。
白色の模様には個体差があります。
写真のように独立して斑点になっている個体もいれば
つながって帯状に見える個体もいます。
ただし、成魚になった際にどの程度まで模様に差が出るのかは、私は知りません。
加えて、夜中になるとパリっと白くなるので、そこまでこだわって厳選しなくても良いと思います。
例にたがわず、沈下性の人工飼料をよく食べます。
(遊泳系のドラスは総じて冷凍赤虫より人工飼料のほうが餌食いがいいです。)
成長は他のドラスより速いです。
速いといってもドラスですので、
1年飼って「あ、一回り大きくなったかな」
と感じるレベルです。
ビビりなのでシェルターを用意して飼ってあげてください。
4. 見分け方
キボシドットカイザードラスの他にカリプトドラスの名前で流通しますが、
結論としては、どちらを購入しても同じ魚が届きます!
一応、学術的にはキボシドットカイザードラス(Wertheimeria maculata)とカリプトドラス(Kalyptodoras bahiensis)は異なる魚です。
見分けはカンタン、黒地に白スポットがキボシドット、白地に黒スポットがカリプトです。
「Kalyptodoras bahiensis」でGoogle検索かけて頭の方に出てくるのが“カリプトドラス”です。
5. 参考文献
- Steindachner, F. (1877). Die Süsswasserfische des südöstlichen Brasilien (III).Sitzungsberichte der Kaiserlichen Akademie der Wissenschaften, Mathematisch-Naturwissenschaftliche Classe, 74, 559–694
- Birindelli, J. L. O. (2014). Phylogenetic relationships of the South American Doradoidea (Ostariophysi: Siluriformes). Neotropical Ichthyology, 12(3), 451–564.
- Vono, V., & Birindelli, J. L. O. (2007). Natural history of Wertheimeria maculata, a basal doradid catfish endemic to eastern Brazil (Siluriformes: Doradidae). Ichthyological Exploration of Freshwaters, 18(2), 183–191.
- Takagui, F. H., Baumgärtner, L., Baldissera, J. N., Lui, R. L., Margarido, V. P., Fonteles, S. B. A., Garcia, C., Birindelli, J. O., Moreira-Filho, O., Almeida, F. S., & Giuliano-Caetano, L. (2019). Chromosomal diversity of thorny catfishes (Siluriformes: Doradidae): A case of allopatric speciation among Wertheimerinae species of São Francisco and Brazilian eastern coastal drainages. Zebrafish, 16(5).
- Eler, E. S., Dergam, J. A., Venere, P. C., Paiva, L. C., Miranda, G. A., & Oliveira, A. A. (2006). The karyotypes of the thorny catfishes Wertheimeria maculata Steindachner, 1877 and Hassar wilderi Kindle, 1895 (Siluriformes: Doradidae) and their relevance in doradids chromosomal evolution. Genetica, 130, 99–103.








