アンブリドラス属検索
アンブリドラス属について個人的見解をまとめました!
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とどのつまりこのポスターが今回の肝です。でも続きも読んでちょんまげー。図にまとめるところでかなり手短な説明になったためこれから詳しく話していきます。ソースは逐一書きますが下にもズラッと載せておきます。
A poster in English is also included at the end.
(最後の方に英語版のポスターも掲載しておきます。)
では左ページから…
まずMerodoras nheco ということで参考元はココ*1 です。新種メロドラス報告論文なので信用できると思います。興味を持った、そんなあなたには私が以前作ったメロドラスの記事をオススメいたします。
海外ではAmblydoras nhecoと紹介されているサイトや書籍が多く見受けられます。またアンブリドラス属に分類されているどころかンヘコの記載がない論文もあることから知名度は低そうです。論文が出ているので新属、新種として認められているはずなのですが…
日本でもメロドラスの名前でアンブリドラスが売られていたりするので今回ポスターに掲載しておきました。それはそうとメロドラスの名前で売られるアンブリドラスも珍しい見た目をしているのでお買得だと思いますよ。
次にA. nauticus ですが参考元は洋書*2 です。トゲトゲしてたらA. nauticus だというニュアンスで書いてありました。実際のところはわかりませんがそれを信じるしかないようです。読み方はノーティカスとしましたが私調べです。響きが良いですね… 我はノーティカ・セブン〜♪
洋書についてですが、マイナーなドラスにしては色々と書かれていて良いと思いました。ポスターには関係ありませんが同シリーズのピメロディアの本*3 も買ってみました。写真がとても良かったのですが残念ながら現在では売り切れになっています。文章についてはほぼ読めていないので評価できません…
そしてA. affinis です。アフィニスの名は見覚えがある方もいらっしゃるでしょうが実はここからだいぶ怪しくなります。枝分かれ条件①グアポレ川、ブランコ川、エセキボ川はココ*4 が参考元になります。ココだけでなく他文献、他サイトにも同じようなことが書かれていました。
ただグアポレ川とエセキボ川は地理的に違いすぎますよね…
ワタクシお手製の地図をご覧くださいませ。エセキボ川の先っちょからグアポレ川の分岐点、すなわち2河川の最短直線距離が約1620kmです (私調べ) 。例えば札幌市〜鹿児島市が直線距離で1590kmとなります。頭の中で30km足しておいてくださいね。ま、距離もですが川自体も異なりますので研究の余地アリだと思います。
枝分かれ条件②目がデカい ③背ビレ長い には根拠がありません。え?
入荷されるアンブリドラスを見ていると個人的にコレっぽいのとソレっぽいので2つパターンがあるなぁと思っていまして… 前記の洋書においてアフィニスの写真がコレっぽい個体だったのでその特徴を条件として書いてみました。なので補助的な条件として、②③にはあまり頼らない方がいいかも。
ではでは右ページへ。
A. monitor ですがこれがまたフワフワしていて困ります。おそらくモニターが私の思うコレっぽいアフィニスに対し、ソレっぽいアンブリドラスです。枝分かれ条件①はアフィニスと同じところが参考元です。(ココ*4) もう外見での見分け方なんて無くなりました。産地で見分けようにも「アマゾン川上流域」でございます。決して適当に作った訳ではなく、現状どう詳しく調べてもそれまでとしか言えません。
A. bolivarensis とA. gonzalezi ですがとうとうイラストも消え、枝分かれ条件はもちろん産地で、その産地も被っていてと、来るところまで来ましたね。アフィニス、モニター同様ココ*4 が参考元です。ボリバレンシスはベネズエラ、オリノコ川流域… ゴンザレスはオリノコ川流域、カシキアレ運河…
お手製地図、再び登場。カシキアレ運河またの名をカシキアレ川ですがオリノコ川とネグロ川を繋ぐ河川のようです。短く見えますが全長326km (Wikipedia*5 より) あります。およそ東京〜琵琶湖が直線距離でそのくらいです。
ネグロ川に繋がっているということでアンブリドラス “カイクビ” のインボイスで入荷されたドラスがゴンザレスだったのかもしれないですね。
ボリバレンシスの方は触れません (捻り出す話題も見つけられませんでした)。
まとめますがこのポスターでアンブリドラスは網羅できていると思います。イラストは形、色ともにその種の中央値っぽい個体になるよう作りました。ただし形についてはドラスそれぞれで、この個体とこの個体は同種なハズだけど違うなあと思うケースもあります。色についてもドラスの状態次第で変わります。イラストはあくまで中央値ですので気を取られすぎないよう。もう1つ、残念ながら未記載種の場合、このポスターではどうにもなりません。雰囲気がなんか違うなと思うのであれば他属であることを疑う、もしくはAmblydoras sp. にしておいてください。なんとなく目星がつくのであればAmblydoras cf. 〇〇〇 にしてもよいかもしれません。
以上です。…ここで熱帯魚に詳しい人は
「あれあれ、ハンコッキートーキングとか言うのに。 A. hancockii 出てこなかったな。」
と思うかもしれません。それもそのはずペットショップや書籍ではアンブリドラスのことをハンコッキートーキングキャットの名前で紹介する場合が多々あります。ですが私が考えるに
アンブリドラス ハンコッキーは間違いだ!
そうです。私も今回この投稿をするために調べ始めた付け焼き刃ではありません。日頃から暇さえあればドラスを調べている訳ですし。
根拠として第一に論文でA. hancockii の名を見たことがありません。第二に複数の海外サイトにおいても、洋書においてもA. hancockii という種は掲載されていません。
ではよく入荷されるハンコッキートーキングは何者なのでしょうか。
ハンコッキートーキングのイメージ
写真はよくいるタイプのアンブリドラスです。この個体は産地不明なのですがよく安価でハンコッキートーキングとして売られるのはペルー産が多い傾向です。では早速アンブリドラス属検索を使ってハンコッキートーキングの同定をしましょう!
えーと(画像とポスターを見比べながら)、まずトゲトゲは尾っぽまで繋がっていてお肌スベスベですので稜鱗は完全でくっきり一列ですね。そいでペルーにグアポレ川、ブランコ川、エセキボ川は流れいていませんし、このドラスは目がデカいわけでも背ビレが長いわけでもない普通の感じですよと。
Aに進みまして、ペルーにはアマゾン川の支流が流れています。それもかなり上流域ですね。ですから…
アンブリドラス モニターにたどり着くわけであります。即ちこのことから導き出される結論は
ハンコッキートーキングキャットではなくモニタートーキングキャットだ!
ということ。ハンコッキートーキングキャットは流通名であり学名とは関係ないのでそのままでいいのですがわかりやすく言うとモニタートーキングキャットになるということです。しかし学名になると話は変わります。流通量が多く、よく書籍などで掲載されるアンブリドラスの名はA. hancockii というのは間違いでA. monitor なのです。私は以前からちょくちょくアンブリドラス ハンコッキーはいないと言っているのですがこのようなストーリーが中身にあったのです。ではA. hancockii は全くの虚であるかといいますとそうではなく、現状Platydoras hancockii のシノニムとして扱われているようです。ちなみにプラティドラス属にはホワイトライントーキングキャットなどが分類されています。私が1番伝えたいことはこれでした。
これらは個人的な見解です。もちろんアンブリドラスのことをA. hancockii という方々を批判するわけではないですし、古くから呼ばれてきたハンコッキートーキングの名からA. hancockii は正しい学名のように思えます。しかし何が信用に値する情報のか、調べればすぐにわかると思います。
…とは言いつつ間違えであればごめんにょっぴー。それこそAmblydoras cf. monitor とでもしましょうか。ビビりですから保険をかけておきました。
ただA. monitor の中でも頭の形や模様、雰囲気などにおいて様々な差異を感じますので完璧なアンブリドラス属検索ポスターにはまだまだ程遠いと感じます。この差異はA. monitor に限らず多くのアンブリドラスで言えることです。現段階では解明しきれているとは言えませんが研究者さんには頭が上がりませんね。
今後、研究の発展や、新たな論文が閲覧可能になることで私の作ったポスターが物足りなくなるかもしれません。その場合は適宜手直しして更新しますので
ホーム画面左上サイドバー > ラベル >魚類検索
から最新の投稿をチェックしてみてくださいね。
A poster written in English are also available.
(英語版のポスターも掲載しておきます。)
Reference
(参考元の参考がソースになっている場合もあるかもしれませんがそこまで追えませんでした…orz)
*1
論文 : HORÁCIO HIGUCHI, JOSÉ L. O. BIRINDELLF, LEANDRO M. SOUSA & HERALDO A. BRITSKF (2007): Merodoras nheco, new genus and species from Rio Paraguay basin, Brazil (Siluriformes, Doradidae), and nomination of the new subfamily Astrodoradidae.
リンク先 : Research Gate (2007): (PDF) Merodoras Nheco, New Genus And Species From Rio Paraguay Basin, Brazil (Siluriformes, Doradidae), And Nomination Of The New Subfamily Astrodoradidae. (https://www.researchgate.net/publication/255603246_Merodoras_Nheco_New_Genus_And_Species_From_Rio_Paraguay_Basin_Brazil_Siluriformes_Doradidae_And_Nomination_Of_The_New_Subfamily_Astrodoradinae). accessed 6 April 2022.
*2
本 : Steven Grant (2021): Banjos, Dorads and Woodcats − Aspredinidae, Doradidae and Auchenipteridae Catfishes. ATS-Aquashop.de. 299p.
リンク先 : ATS-Aquaop.de (2020): Banjos, Dorads and Woodcats − Aspredinidae, Doradidae and Auchenipteridae Catfishes. (https://www.ats-aquashop.de/en/products/books/banjos-dorads-and-woodcats-aspredinidae-doradidae-and-auchenipteridae-catfishes/). accessed 6 April 2022.
*3 話に出したので書いておきます。
本 : Steven Grant (2021): Pims − Pimelodidae, Heptapteridae and Pseudopimelodidae Catfishes. ATS-Aquashop.de. 219p.
リンク先 : ATS-Aquaop.de (2020): Pims − Pimelodidae, Heptapteridae and Pseudopimelodidae Catfishes. (https://www.ats-aquashop.de/en/products/books/pims-pimelodidae-heptapteridae-and-pseudopimelodidae-catfishes/). accessed 6 April 2022.
*4
論文 : CARL J. FERRARIS, JR. (2007): Checklist of catfishes, recent and fossil (Osteichthyes: Siluriformes),
and catalogue of siluriform primary types
リンク先 : Magnolia Press (2007): Zootaxa, Checklist of catfishes, recent and fossil - Magnolia Press. (https://www.mapress.com/zootaxa/2007f/zt01418p300.pdf). accessed 6 April 2022
*5
リンク先 : カシキアレ川 (April 6, 2022 23:00 UTC) In Wikipedia: The Free Encyclopedia. Retrieved from https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B7%E3%82%AD%E3%82%A2%E3%83%AC%E5%B7%9D
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