絵描きの口笛
今回は普段イラスト作りを頼んでいるヘンジーさんの作業に密着させていただきます。
せっかくなのでヘンジーさんの作業机を掃除せずに写真を撮らせていただきました。基本は図鑑やインターネット、私の写真からモデルを集めてiPadでアプリkeynoteに指で書き込み、適当にお菓子つまみながら、CD聴きながら気楽にやってるそうです。
さて今回は以前作ってもらったアンブリドラスの書き直しに密着します。
私 ではヘンジーさん、お願いします!
へ ハイハ〜イ!
私 基本は写絵なんですよね?
へ ハイ!
私 ヘンジーさん、基本のモデルはこの写真に決めたんですね。
へ …
私 返事は?
へ あ、ハイ!
私 これは写真を重ねながら指で描いているんですか?
へ ハイ。
私 それぞれの写真の良いところをかいつまんでいくんですね。ちなみに今写っている写真はおでこだけしか使わないみたいです。
へ ハ〜イ。
私 だいぶ進みましたね。ベースの写真とは線がズレてるようですが大丈夫なんですか?
へ ハイ!
私 普段の感覚で色んな写真から選んで各部位を書き込んでるようです。そうすることで同じテンション(同じ角度や光の当たり方)の魚を描けますね。ちなみに今回は合計で何枚の写真を使いました?
へ …
私 あ、えーと5枚とか?
へ High
私 …6枚か?
へ ハイ。
私 順調なように見えますが、気に食わないようで?
へ ハイ。
私 体高が一番高くなるところがズレているのが気に食わないと、なるほど。分厚くなっている部分を赤↕︎から青↕︎に描き変えるみたいです。
私 確かに変わりましたね。頭の中にあるイメージに近づきました。
へ ハーイ。
へ ハイ!
私 シャクレていたのを直して下絵の完成ですね!
へ ここまでで三時間半ほどかかりました。
私 ん?それではようやく色塗りの工程に入りましょう。
へ ハイ。色をコピーペースト出来る機能を使って一枚一枚重ねて眼を作ります。コピーしたまんまの色に違和感があれば適宜調節します。
私 普段は普通に喋るもんね。
へ ハ〜イ。
へ 線で囲まれたところを塗りつぶす機能もあるので、それを使ってどんどん細かい模様をつけていきます。
へ 模様の輪郭を描いては塗り潰しの繰り返しです。
私 ここもなるべく平均的な個体のイラストになるように、今まで見てきた経験からなるべくベーシックな模様を描いているそうです。
へ ここら辺は写絵というより普通に描いてます。
へ そんなこんなで出来たそれぞれの部位を重ねて完成です。
私 ここが1番楽しいとこなんだよね♪
へ 色塗りも三時間半ほどですか。
私 たぶんね、そんなところ。
私 というわけで完成しましたね。
へ ハイ!
私 最初に決めた基本のモデル写真とは色や形がかなり違ってますが。結局合計で七時間ほどでしたね。
へ ハ〜イ。
私 平均値の個体を作り出したって感じです。
描き方はコレで終わりなのですが、続けてヘンジーさんはこう語ってくれました。
私がイラストをこう描いているのは魚をみる「感覚」を掴みやすくするためなんです。
特に茶色の地味な魚ほど違いがわかりにくいものです。それをイラストにして単色のベタ塗りにしたり、簡略化することによって見やすくなりますよね。更に、イラストを見てから写真を見ることで、どこに注目したらよいのかもわかります。
例えば模様の位置、色の変わる境界、顔つきなど。普段ずっと観察して見慣れた人なら一目見てわかる、その「感覚」を慣れない人にもなるべく伝えたいんです。平たく言うと、私の目にはこう写っているぞっていうイメージの具現化になります。
基本は写絵ですが完全な写絵とは違います。解像度の高さでいうと写真はイラストより優れていると思いますし、写絵にはあまり意味を見出せません。写実主義の衰退と同じです。
ただ簡略化されたイラストには、いわゆる感覚的な解像度が写真よりもずっと高いものがあると思われます。感覚を伝えたいという私の目的にもかなっています。だから私は印象派が好きです。
その場の空気、匂い、温度の表現は写実ではなかなか叶いません。ドブネズミも写真越しに見てはなりません。感覚を伝えるとはそういうことだと考えています。ただ、決してカリカチュアになってはいけません。図鑑という役割を目指す上で嘘はつけないからです。そのため尾鰭の軟条などよくわからない部分は空白のままにしてあります。つまり、私はどこまで精密さを担保しながら正直に簡略化できるかを攻めている訳です。
魚を見たまんまで伝えるにはどうすれば良いのか。答えはそれぞれの魚を自分の頭の中で、同じ角度、同じ明るさで作り出し、最低限違いがわかるまで簡略化したイラストにすることなんです。
私 最後にヘンジーさんの名前ってどっからきましたの?
へ 好きなバンドのボーカルのあだ名がベンジーだから。ハイ。
私 返事ーとかは関係ないんかい…
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